今日はコンビニのバイトの日。

客が引いたところで、品出しを始める。


コンビニのバイトは人目が多いから、いつもの瓶底眼鏡スタイルのまま。

自分の姿を隠せてるこの格好がやっぱり落ち着くし。



「いらっしゃいませ」

バイト仲間の良樹君の声がする。

お菓子売り場から客の人数を確認するとやって来たのは一人。

対応は良樹君だけで、大丈夫そうだね。


新しい箱を開けて、お菓子を棚に納めていく。

これが終わったら、ゴミ集めをしなきゃ。


さくさくと働く。

大学入学と共に働きはじめて3ヶ月、もう仕事も手慣れたもんだ。

初めはコンビニなんて言う人目の多い所で働くことに緊張したけれど。

慣れてみればなんてことはない。


レジ打ちで客を相手にするときだって、必要以上に話さなくてもいいし。

マニュアル通りの対応が出来るから、比較的に楽だ。


私の風貌を見て、変な誘いをする人も無駄話を振ってくる人もほとんどいないし。

ご近所のお婆ちゃんやお爺ちゃんは、たまに孫のように話しかけてくれるが、それぐらいなら平気だ。



「いらっしゃいませ」

再び良樹くんの声がした。

陳列の終わった空のお菓子の箱を手に、レジカウンターへと戻る。


良樹くんは一人目の客の対応中だった。


バックヤードにゴミをしまって、カウンターに再び戻ると、ジュースを手にレジへとやって来る人物が目に入った。



「ゲッ」

うんざりした声が出たのは許してほしい。


「あれ? 千尋ちゃん、ここでもバイトしてるんだ」

話しかけてほしくなかったのに、北本先輩は笑顔で私を見つめる。

「いらっしゃいませ」

マニュアル通りに挨拶する。

先輩の家から遠いうちのコンビニに現れるなんて、思いもしなかった。


「ハハハ、相変わらず。ジャイアントフランクちょう~だい」

「かしこまりました。1つでよろしいでしょうか?」

「よろしいです」

からかうようにそう返してきた北本先輩を見ることなく、手を消毒して、トングを手に保温ケースを開ける。

北本先輩は、何が楽しいのかニコニコしながらこちらを見てる。


「ねぇねぇ。何時までバイト?」

「・・・・・」

うざい、本気でうざい。


「送っていこうか? 遅い時間だし」

カウンターからこちらを覗く北本先輩。


「いえ、結構です」

そう返して、紙の袋に入れたジャイアントフランクをカウンターに置いた。