よほど、私と会わせたくないのか、お陰で助かってる。

北本先輩も、可愛い妹の頼みは聞くしかないもんね。


「涼香ちゃんはお兄さん、嫌いなの?」

ずっと気になってた事を聞いてみる。


「ううん、好きだよ」

意外な返事に目を丸くする。

あんなに、女ったらしだとか言って怒ってるのにね。

まぁ、兄妹だもんね。嫌うことはないか。


「お兄ちゃんの生活態度が嫌い。涼香の事は可愛がってくれるけど、変な女の人ばっかり連れてくるし、会うたびに違う人だし」

本当やだ、と溜め息をついた涼香ちゃん。


北本先輩、遊びを家に持ち込んじゃダメだよ。

可愛い妹に、本当に嫌われちゃう。


「そっかぁ、それは嫌だね」

「うん。いつか、お兄ちゃんを真っ当な道に戻してくれる彼女が出来たらいいなぁ」

「彼女は良いんだ?」

「不特定多数じゃなきゃいい」

「フフフ、確かにそうだね」

「先生みたいな可愛くて優しい人だったら、もっと嬉しいなぁ」

涼香ちゃんの望みは叶えられないなぁ。


「見つかると良いね。そんな人」

「うん。今のお兄ちゃんに先生を会わせられないもんね。先生が遊ばれちゃうとか嫌だもん」

今時の小学生はそんな事も知ってるんだね。


「ハハハ」

なんて返していいのか分かんないよ。


「でもね。涼香とお兄ちゃん、半分しか血が繋がってないんだぁ」

足をぶらぶらさせながら呟くように言う涼香ちゃん。


「そ、そうなんだ」

「うん。お兄ちゃんのお母さんは、お兄ちゃんを置いて男の人と出てっ行ったんだって」

ダークな話になってきたな。

涼香ちゃん、出来ればお家の内情はあまり話さない方がいいよ。


「へ、へぇ」

反応に困る。


「お兄ちゃんが女の人に執着しないのはそのせいなのかなぁ」

「・・・・・」

私にどう答えろと。

「ママに置いていかれたら、涼香だったら泣いちゃう」

「そ、そうだよね」

「お兄ちゃんも悲しかったと思うんだぁ。自分より男の人を選んだママの事恨むかも」

「・・・・・」

苦笑いを浮かべるしかなかった。


北本先輩の気持ちも分からなくないけど、だからって女遊びに興じるのはどうかと思うよ。


「お兄ちゃん、ママにもよそよそしいんだよねぇ」

「そ、そっかぁ。あ、涼香ちゃん、そろそろ勉強に戻ろうか」

これ以上、内情を話されると困っちゃうし。