千尋の隣に座ったところで、教授がやって来て講義が始まる。

ノートを取りながら、ふいに千尋の横顔を見る。

ツルツルした白い肌に、眼鏡の隙間から見えるカールした長い睫毛。

ほとんどの人が彼女の本当の顔を知らないけれど、かなりの美少女なんだけどなぁ。

隠してるのが勿体ない。


千尋がこんな風になったのには理由がある。


私達が出会って一年目の中学三年の時にそれは起こった。

千尋には幼稚園からの幼馴染みの彼氏がいた。


倉木大翔(クラキソラ)と言って、イケメンで優しくて千尋を大切にしていた。

サッカー部のキャプテンで、美少女の千尋とはみんなが羨むようなカップルだった。

家も近所で、親同士も仲良くて、文句のつけようもなかった


それがある日、突然現れた一人の女の子のせいで二人の関係は崩れた。

その女の子はある占い師の占いで、大翔が自分の運命の相手なんだと言われ二人の間に割り込んでいったんだ。

優しい大翔は自分を慕ってくる女の子を無下に出来なかった。

私から言わせれば優柔不断な男だっただけなんだけど。


千尋との距離が空いていくことに気付かずに、好き好きと押しまくる女の子の策略に嵌まり気の迷いで関係を持ってしまった。

それが決定打になり、千尋は大翔と距離をおいた。

大翔は千尋に謝って、復縁を迫ったけれど千尋は首を縦に振ることはなかった。

それを良いことに大翔を体で陥落した女の子は、まんまと彼女の座に収まって、千尋にそれを見せつけた。


大翔は今でも知らないだろうけど、千尋はその女の子から随分と嫌がらせも受けていた。


嫌がらせをされ、彼氏を失い、失意の千尋は自分を苦しめることになった占いにのめり込んでいった。


あの時の、千尋は見てられないぐらいボロボロになってたよ。

側で見てるのが苦しかったもの。


大翔と会いたくないからと、家から通うことの出来ない遠い高校にわざわざと進学した。

事の顛末を私から詳しく聞いた千尋の家族も、大翔の側に居たくないと言う千尋の願い叶えたいと相談されたので、私も同じ学校に行くので同居だったらどうか? と進言したのは私。

そして、大翔の居ない他県に私達はやって来た。


大学も同じ街にしたので、大翔とはまったく関わることなく過ごせてる。


あんな男に、二度と千尋を会わせてやるもんですか。


こんな地味な学校で、占いババとか呼ばれちゃう様な女の子にしたあの男は絶対に許さない。

たとえ、千尋が許したとしてもね。




ーendー