「わ~ん、どうしよう、紀伊ちゃん」

翌日、講義室で出会った紀伊ちゃんに泣きついた。

紀伊ちゃんは昨日の夜帰りが遅かったので話せなかったし、朝は私の方が一コマ多かったから早く家を出たんだよね。



「ど、どうしたのよ」

驚いて目を丸める紀伊ちゃんに昨日のあらましを話して聞かせる。


「北本先輩が~」

本屋で脅かされた事と、カテキョ先が北本先輩の自宅だったことを続けざまに話す。


「あの男、本当。油断ならないわね」

「そうなの、本当そう」

うんうんと頷いた。


「カテキョ先が北本先輩ん家って最悪よね」

「うん。でも。妹さんとお母さんはすっごくいい人だった。今さら断ることも出来ないし」

半泣きで言う。


紀伊ちゃんは難しい顔で腕組みをする。

「確かにね。訪問前なら断れたのにね。とにかく家で出会わないようにするしかないわね」

「うん。それは涼香ちゃんが細かく連絡くれる事になってるから、なんとかなりそうだけど」

昨日帰り際に、携帯の番号を交換しておいた。

抜かりはない。


「でも週2なんでしょ? 気を付けなさいよ」

「うん」

「それに、今の格好じゃなくて普通の姿なんだから、余計に警戒してよ」

普通の姿って・・・紀伊ちゃん、今も普通なんだけど。

ちょっと不服そうに見上げたら、

「瓶底眼鏡外して、髪を下ろしてる姿が千尋の本当の姿なんだよ」

と叱られた。


だって、占いは地味に生きろってなってるんだもん。

目立つ格好したくない。



「いっそ、瓶底眼鏡で行こうかな」

「今さらそんなので行ったら、不審者に間違われるわよ」

更に怒られた。

だって・・・・だって、目立ちたくない。


「いい加減、占いから離れなさいよ。まったく」

あきれ顔の紀伊ちゃん。

「無理だよ。占いないと生きていけない」

「バカ言ってんじゃないの! 自分を占っても当たらないでしょ」

「そ、それは・・・」

紀伊ちゃんは痛い所をついてくるなぁ。

あ~、今日は帰ったらタロット占いしよ。


「ちょっと、ぼんやりしてないで聞きなさい」

「紀伊ちゃん、痛いよぉ」

頭を叩かれて、涙目になった。