砂川さんから見せられた証拠の書類には咲希の名前もあり、何枚かの写真もあった。


小澤直人と一緒にいる写真は全て笑顔で、咲希は口数も少なく大人しい感じの子だと思っていたのに。


智哉がお菓子を持って来てくれる事が嬉しくて、そのお菓子を咲希と一緒に食べた、楽しい思い出しかない。


咲希も智哉が大好きだと言っていたと思う。


「咲希は智哉樣が好きなんです。あの桜の木にまどかとともやと書いてあったのを、しんやと書き変えたのは咲希だったのです。」


嘘、信じられない。


咲希が智哉を好きだったなんて、智哉と分かれるのが辛くて、あの木に書いた時、咲希が一緒にいて、叶うと良いねと言ってくれたのに。


全部嘘だったなんて、思いたくない。


「俺は何度も咲希に告白されたけど、断った。」


それはいつの話。


10年前も今現在も咲希に告白されたと言った。


誰も信じられない。


「麻都佳は人を信用し過ぎだな。」


友達なら、普通信用するはずでしょ。


最初から疑う事は出来ない。


「麻都佳はお子様だからな。仕方ないか。」


絶対、バカにしてる。


咲希と会って話したいけど、それは叶わないらしい。


そして、もう一つの決定的な真実。


小澤直人は真也から私を奪う計画も立てていた。


はぁ、どういう事ですか。


小澤直人と面識もないし、真也から私を奪う意味が分からない。


先ずは真也と私に表向きの婚約発表をさせて、真也が会社のお金を横領してる、嘘の証拠を叩きつけて、真也から社長の座を奪うと同時に私と結婚を決めると言う筋書き。


智哉と真也の父親が社長になる条件を、永島麻都佳と結婚をする事に決めたせいで、大変な事が起きようとしていた。


だからって、面識もない女と結婚する気ですか。


嫌々、私は小澤直人と結婚なんて絶対しないし、近づいたら殴り倒してやる。


本当に無理。


信じられないことが多すぎて、吐き気がした。