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「もう帰りたい」


森へ一歩足を踏み入れた時、菜摘がそう呟くのが聞こえて来た。


誰にも聞こえないように言ったつもりだったみたいだけれど、あたしの耳には届いてきた。


「菜摘、大丈夫?」


そう声をかけると菜摘は不安そうな表情をこちらへ向けた。


「嫌だよ、もう帰りたい」


今度はハッキリとそう言った。


「ねぇ、本当に儀式なんてするのかな?」


前を歩いていた真琴がそう言った。


その手にはすでにいくつかの小枝が持たれている。


「するんでしょ?」


菜摘が誰ともなく、そう訊ねた。


あたしは左右に首をふる。


「わからないけど、でも、幸弘と創吾はやる気だよ」


「血を……集めるの?」


菜摘がそう言い、青ざめた。


そうだった。


儀式にはみんなの血が必要だと言っていた。