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気が付けば、俺は病院の椅子に座っていた。


誰がここまで俺を連れて来てくれたのか、全然覚えていなかった。


俺が我に返る事できたのは、近くで聞こえて来た泣き声のおかげだった。


何度もあった事がある乃愛の両親が声を上げて泣いている。


『どうしたんですか?』


そう声をかけようとして、椅子から腰を上げた。


しかし体に力が入らず、そのままストンと座ってしまった。


まるで、自分の体じゃないような気がして戸惑う。


周囲を確認してみると、とても静かで人の行き来がない。


ここにいるのは俺と、乃愛の両親だけのようだ。


遠くから人の話し声は聞こえて来るけれど、ここには真っ白な廊下が続いているだけで何もない。


自分は待合室にいるのだと思っていたけれど、どうやらそれは違うらしい。