一刻でも早くあの小屋から離れたくて、歩調はどんどん速くなる。


森の出口が遠すぎて舌打ちをしてしまう。


乃愛と繋いでいた手がいつの間にか離れ、前を歩く事で精いっぱいだった。


「ねぇ、幸弘待って!」


少し後れを取っていた乃愛が小走りになる足音が聞こえて来た。


その時だった。


「キャァッ!」


短い悲鳴が上がり、乃愛が転んだのだ。


ハッとして立ち止まり、乃愛に駆け寄る。


乃愛は苦痛に顔を歪めている。


「乃愛、大丈夫か?」


乃愛の体を起こそうと手を貸した時、その足に鉄製の物が噛みついている事に気が付いた。


野生動物を捕獲するための道具だと、すぐに気が付いた。


鉄でできたそれは輪の形になっていて、中央に足を差し込むと輪が作動し、左右から足を挟まれる仕組みになっている。


獲物の逃さないために輪の内側はノコギリのようになっていて、乃愛の足首にキツク食い込んでいるのだ。