「やめてよ……」


菜摘がか弱い声で訴えかけてくる。


俺は菜摘の顔を見ないようにしてドアへと視線を向けた。


乃愛の両親がいつ戻って来るかわからない。


決めたのなら早く実行に移す必要があった。


俺はドアへと近づき、そっと開けた。


廊下は薄暗く誰もいない。


「真琴、先にエレベーターのボタンを押してくれ」


俺がそう言うと、真琴がビクリと体を震わせ左右に首を振った。