要するに彼女は、他人の目などものともせず、自分が興味のある事柄だけをとにかく大切にしていた。貴族の令嬢にしてはかなり自由奔放な人物である。


 兄よりも認められたいという欲求と共に育ってきたロベルトにとってアリシアは、眩しくもあり不快でもあった。


 アリシアだって所詮は女。自分が一つ二つ甘い言葉でもささやけば簡単にものになるだろう。少し遊んで捨ててやれば、あの顔が歪む姿を拝めるに違いない。

 そんな思いでアリシアに構いに行った。



 結果は玉砕たった。



 他の女が喜ぶような言葉をいくら並べても、アリシアは面倒くさそうに眉をひそめるだけで、一向になびかなかった。

 それどころか、そんなことばかりして暇なのかと問われる始末だ。


 悔しかった。悔しかったが、不思議なことに、その一件を境に彼女に対する不快感が綺麗に消えていった。

 代わりに強い興味が湧き、気がつけばアリシアのことを目で追うようになっていた。


 その興味は、次第に生まれて初めて抱く恋愛感情へと変わっていった。



 自分はアリシアのことが好き。そう認めた時は案外心地よい感覚だったように思う。

 しかしその頃のロベルトは、プレイボーイを演じてきた弊害か、素の自分で彼女に話しかけることができなかった。