「……あ」



その瞬間、小さく漏れた東條の声。
香乃華さんは、不思議そうに東條の顔を見上げている。

東條はふっと笑って、もう一度手を差し出した。



「もう一つちょうだい。
今度は、オレンジで」




──オレンジ、って……
あたしの、好きな色?


そっと手渡すと、東條は笑って「ありがとう」と言った。




「泰臣さん、どうして二つも?」



そう言った香乃華さんは、不思議そうな、だけど少しだけムッとしたような表情を浮かべている。


東條は、あたしが手渡した二つの風船を見ながら一度ふっと笑って、口を開いた。




「俺の一番大事な人と、お揃いにしたいと思ったから、かな」



二つ宙に浮いたまま並んだ風船。
東條が好きな緑色と、あたしが好きなオレンジ色。