☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3



連れていかれた先は、思い通りの倉庫B棟。


「ここで、お迎えを待っててな?」


トン、と、背中を押され、足元にあった木材につまずき、転ぶ。


(痛いわ!ボケ!!)


ひとまず、懐から拳銃が飛び出さなかっただけ、マシということにして、私は扉が閉められるのを待った。


そして、耳をすます。


『めっちゃ、美人だったな』


『ありゃあ、高い金が入るぞ~』


『おい、早く撤収しねぇと……』


彼らが中岡組ならば、別の人間がここにくるということだ。


つまり、私達を売りさばく相手が別にいると。


(面倒……)


とっとと、手を出せばいいのに。


彼らにとって、女よりも金らしい。


人の声が遠くなり、シン、と、静まる。


(そろそろ、いいかな……)


私は手にかかった縄を外すため、くっつくように縄で固められた両手を、それぞれ、外側に引っ張った。


その影響で、緩む縄。


指先を下に向ければ、スルリ、と、落ちる。


勇真兄から教えられた、ヤンキーならできて当たり前の、いや、出来なければ、ヤンキーを名乗ってはいけない(らしい)秘技、縄抜けである。


この秘技は、結ばれるときにやることがあるんだが……時間がないので、それはまた、後日ということで。


ともかく、手が自由になりゃ、こっちのもんだ。


足は幸い縛られていなかったから、すぐに行動に移すことができて、何より。