連れていかれた先は、思い通りの倉庫B棟。
「ここで、お迎えを待っててな?」
トン、と、背中を押され、足元にあった木材につまずき、転ぶ。
(痛いわ!ボケ!!)
ひとまず、懐から拳銃が飛び出さなかっただけ、マシということにして、私は扉が閉められるのを待った。
そして、耳をすます。
『めっちゃ、美人だったな』
『ありゃあ、高い金が入るぞ~』
『おい、早く撤収しねぇと……』
彼らが中岡組ならば、別の人間がここにくるということだ。
つまり、私達を売りさばく相手が別にいると。
(面倒……)
とっとと、手を出せばいいのに。
彼らにとって、女よりも金らしい。
人の声が遠くなり、シン、と、静まる。
(そろそろ、いいかな……)
私は手にかかった縄を外すため、くっつくように縄で固められた両手を、それぞれ、外側に引っ張った。
その影響で、緩む縄。
指先を下に向ければ、スルリ、と、落ちる。
勇真兄から教えられた、ヤンキーならできて当たり前の、いや、出来なければ、ヤンキーを名乗ってはいけない(らしい)秘技、縄抜けである。
この秘技は、結ばれるときにやることがあるんだが……時間がないので、それはまた、後日ということで。
ともかく、手が自由になりゃ、こっちのもんだ。
足は幸い縛られていなかったから、すぐに行動に移すことができて、何より。


