「な、なんだ!お前!!」
「えっとぉ、友達と別れたあと、迷子になっちゃってぇ……」
(おえっ……なんだ、このキャラ!!)
偽りを演じることには慣れているが、このキャラは好きじゃない。
「こっちに旅行できたから、ホテルまでの道がわからないんですぅ~」
無駄に言葉を伸ばしたり、母音を小さく付け加えるあの技は到底、理解できないが、こういうときには役に立つものだ。
ポンポンと面白いくらいに、敵が引っ掛かる。
(相馬に感謝だな……)
こういう女が多い上流階級で、相馬の回りに集まるのがこんなタイプの女たちだった。
お陰様で、アイデアは豊富だ。
「ところで、お兄さんたちって、この国で言う“お侍さん?”」
「あ?」
「この国には、そういうのがいるって聞いたんだけど……私、生まれたときから海外だったから、この国のことについて、知らないんですぅ。なんですか?お縄とか、あるんですかぁ?」
……ぶっちゃけ、ここまで、この国について詳しい帰国子女なんているものか。
わかっているが、
「そうか……試してみたいか?」
「はい!是非!!」
ほら、バカは引っ掛かる。
言われるままに手を差し出すと、縄で縛られる。
「スゴーい!」
わざと、喜んだ振りをしていると、
「お迎えがくるからな、ここで待ってな?」
「お迎えー?」
と、彼らは私をつれていく。
(ここまで、スムーズに事が運ぶなんて……逆に、怖いぞ)
どんだけ、バカなんだろう……。
焔棠の人間は全員、秀才であるから、この人たちのバカさが怖い。


