☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3



「な、なんだ!お前!!」


「えっとぉ、友達と別れたあと、迷子になっちゃってぇ……」


(おえっ……なんだ、このキャラ!!)


偽りを演じることには慣れているが、このキャラは好きじゃない。


「こっちに旅行できたから、ホテルまでの道がわからないんですぅ~」


無駄に言葉を伸ばしたり、母音を小さく付け加えるあの技は到底、理解できないが、こういうときには役に立つものだ。


ポンポンと面白いくらいに、敵が引っ掛かる。


(相馬に感謝だな……)


こういう女が多い上流階級で、相馬の回りに集まるのがこんなタイプの女たちだった。


お陰様で、アイデアは豊富だ。


「ところで、お兄さんたちって、この国で言う“お侍さん?”」


「あ?」


「この国には、そういうのがいるって聞いたんだけど……私、生まれたときから海外だったから、この国のことについて、知らないんですぅ。なんですか?お縄とか、あるんですかぁ?」


……ぶっちゃけ、ここまで、この国について詳しい帰国子女なんているものか。


わかっているが、


「そうか……試してみたいか?」


「はい!是非!!」


ほら、バカは引っ掛かる。


言われるままに手を差し出すと、縄で縛られる。


「スゴーい!」


わざと、喜んだ振りをしていると、


「お迎えがくるからな、ここで待ってな?」


「お迎えー?」


と、彼らは私をつれていく。


(ここまで、スムーズに事が運ぶなんて……逆に、怖いぞ)


どんだけ、バカなんだろう……。


焔棠の人間は全員、秀才であるから、この人たちのバカさが怖い。