「夏翠」


出ていった沙耶が訪ねそうであり、今、双子がいると思った場所……それが、姫宮本邸。


この家のどこかに、双子はいると知っていた。


「相馬!?」


案内され、たどり着いた部屋の中。


それぞれが集い、話をしていて。


「甲斐?お前もここにいたのか」


仕事中、急に抜けた甲斐。


どうやら、沙耶のためだったらしく、俺のもとに寄ってきた。


「相馬、柚香が……」


「判ってる。健斗さんから貰ったヒントに書いてあった。今から、迎えに行ってくるよ」


時刻は、午後九時過ぎ。


「族、動かす?」


「動かすなら、薫に言うよー?」


仕事中らしく、薫と相模はこの場所にいなかった。


代わりに桜が、伝言役を務めていて。


「いや……何百人の人間を巻き込んで、大事にするつもりはない。拐ったのが夕方なら、恐らく……夜、活動する人間を使っているんだろう。健斗さんが特に手出しをしないってことは、まだ、柚香は無事だ。何もされていない。基本的、健斗さんはそういう行為を嫌う人だからな、知れば、人生の終わりまで導くだろうよ」


あの人のことは、一通り、知っている。


実の父親を殺したことも、法に触れまくった行いをしていることも。


でも、それはすべて認められることで、警察の上部を支配する力を内に潜める彼は、長生きする。


そして、一代であり得ないくらいの大きさまで、一人で会社を大きくすることになるだろう。