「どんな過ちをおかしても、愛を貫けば……相手が死に絶望を見て、自身の命が尽きるときですら、相手の顔が思い浮かぶなら、相手を恋しく想うなら、それは真実(ほんとう)の愛だったと言えるんじゃないか?」


「……」


「少なくとも、俺は沙耶たちにそう教えてきたよ」


父を殺し、血に染まった手で救ったユイラを妻にし、沙耶を授かり、友を喪い、多くのことがあったこの半生で。


「最期まで、どんなことでも貫けと、教えてきた」


それが、愛だろうと、復讐だろうと、何であろうと。


「お前に願うならば、沙耶の心を壊さないことかな」


「え……?」


「幼い頃から、お前と同じように苦労をしてきた子だ。心はボロボロで、今も傷ついてるだろう」


「……っ」


息を呑む義理の息子なら、救えるだろう。


光のない目をした、壊れかけた娘のことを。


「でも、さっき、訪れた沙耶は決意に満ちた顔をしていた。そして、俺に頼み事をしてきた」


ここからは、仕事だ。


「裏の世界を司り、指揮する御園家当主、御園相馬に仕事を頼みたい」


一瞬、目を見開き、そして、彼は瞳に光を取り戻す。


「この地図の場所、そこに問題があるから、そこの問題を片付けてくれないか?相手は、黒だ」


「っ……はい!」


本来ならば、御園家の当主に、僕は命令できる立場ではない。


それでも、これは半分、父親としてだから。


「頼むよ、相馬」


そう、微笑めば。


「……つぐつぐ、人が悪いですね」


僕の言葉に何かを見いだしたのか、聡い相馬は部屋を出ていく。