「……君がそんな顔をするのはなぁ～」
思い詰めた、顔。
ただ、大事にしたい。
それだけの思いが、相馬を追い詰める。
「……俺は、どうすればいいですか」
「ん？」
「沙耶を愛してる。大事にしたい。そう思っているだけなのに。俺の血は、気持ちは、沙耶を傷つけることしかない」
「……」
「茅耶と悠哉が出来た時、俺はそばにいてやれなかった。あいつ、悪阻が酷かったんでしょう？」
「……まぁな」
「なのに、俺は……」
昔から、変わらない。
限界まで、自分を追い詰めるところ。
「……俺は、沙耶の苦しみに寄り添えない」
結果、自分の存在に絶望する。
初めて逢ったとき、母親の自殺によって存在を否定された相馬は、似たようなことを言っていた。
『……母親にすら捨てられる俺が、この世界のどこで生きることを許されるんですか？』
幼くも、光のなかった目をこちらに向け、相馬は俺に問いてきた。
『生きることを許すのは、他人なのか？』
『……』
『君を愛してくれる人は、きっといる。僕だって、何度も思ったよ。自分なんか、生きている価値なんかないと。だけど、妻に『私を愛してくれて、ありがとう』……そう言われたんだ。初めて、愛せる人間に出逢って、そう言われて、自分の存在は無価値ではないと知れた。だから、君も大丈夫だよ』
あの頃は誰が何を言っても、何の慰めにもならなかったが、今、相馬は愛せる人を、愛してくれる人を見つけ、幸せを感じられる位置にいる。
