(でも、それを言ったら、『貴方もでしょう』と返されるんだよなぁ……)


電話を切り、相馬に向き直る。


「あの!」


「んー?」


ユイラがこちらを見てくるので、手招きをすると、愛妻は不安げな面差しで、相馬をチラチラと見ながら、寄ってきた。


「健斗さん、もしかして、沙耶の居場所を……「――僕と君が出逢ったの、いつか覚えとる?」……」


ユイラを抱き寄せ、僕は被せるようにして、相馬に尋ねた。


相馬は一瞬、瞳を揺らがせると、すぐに立て直し、


「……俺が、9歳の時ですね」


と、言った。


「せや。もう、あれから13年経つんよ」


まだ、その頃の沙耶は心を壊していて、何を言っても、何を聞いても、


『大丈夫』『何でもないよ』『出来るから』『我慢する』『諦められるよ』


と、いう、返答しかしなかった。


僕と相馬が出逢った、13年前。


沙耶がまだ8歳で、朝陽が死んで3年、アイラが消えて2年経ったときだった。


自分の娘の顔から表情がなくなっていく。


それは、かつての自分が重なり、どうにかしてやれないものかと悩んだほどである。