「お前の用件が仕事か、それとも、私事かでも、口調は変わるのだが」


「……私事です」


「沙耶のことやな?」


「……はい」


容姿端麗、博識洽聞、頭脳明晰、文武両道。


完璧すぎる人間と言っても過言ではない男、御園を支配し、その君臨に立つ、御園相馬。


齢、22にして、人望厚く、人の上に立つ男。


我が娘、沙耶の夫である。


「また、喧嘩したんやってなぁ~」


「……」


「で、今回の原因は?」


「……俺が悪いんです」


「んん?」


原因を聞いているのに、そんな言葉を返してきた義理の息子は、疲れきった顔をこちらに向けた。


「沙耶のことが、分からない。そして、自分のことも……」


すでに、沙耶との間に二人の子供をもうけているくせに、何を今さら。


そう思うけど、今の彼に必要なのは、この言葉ではなくて。


「……ちょっと、電話するわ。ほんの少し、待ってくれるか?」


「……はい」


電話相手は、零。


沙耶に頼まれた物を持っていって貰おうと思ったが、相馬の前で沙耶の名前を出すのは不味い気がする。


ユイラの方を見ると、首を横に振られ、でも、電話しないわけにはいかないから、わざと……