柚香も、千羽の三男とくっついたし……世の中はわからないことばかりである。


そして、今回の事件。


恐らく、相馬は知らないんだろう。


沙耶の両手に巻かれた、血が滲んでいることが一目で分かる包帯。


本当、どうしようもない娘である。


「――ユイラ、お客様」


「え……?」


僕が黙りこんだからか、静かに黙っていたユイラは僕の唐突の言葉に目を丸くした。


「僕から情報を抜こうと、アポなしで来る義理の息子や。ちゃんと、迎えてやり?」


扉に目を移せば、開かれるドア。


「―気配を殺してきたのに気づくなんて……化け物ですか、貴方は」


「子供の頃に命を狙われ過ぎたせいで、気配には敏感でね?でも、ドアの前に来るまで気づけなかった。流石、御園の若き当主」


「……その仮面の使い分けも、化け物並みですね」


標準語の僕と、関西弁の僕。


関西弁を使用するときが本当の僕で、その姿は親しく、信用しているものにしか見せたことはない。


つまり、仕事のときは前者である。