「その事については、ちゃんと謝っただろ?」
「謝っても許されることじゃないと……」
唇を尖らせ、そっぽを向くユイラ。
そんなユイラの頭を引き寄せ、愛妻の唇にキスを落とす。
「……会社やけん、手加減せんといかんのが残念や」
「……次やったら、零に仕事を増やしてもらうわよ」
「……すいません」
数十年前、結婚するときに感じていたことが現実となり、ユイラはうまく僕を操る。
「こういうところは、似なくて良かったと思ってる」
そして、ハッキリとした、この物言い。
「……ユイラ、もう少し、優しくしてくれても……」
「優しくするのは、妻の時!今は、仕事!つまり、私の役目は秘書!さ、仕事!!」
メリハリのついた、仕事モード。
(ここだけは、本当に教育を間違えたな……)
今更だが、ほんの少しばかり、後悔している。
「仕事中は、標準語!分かった?」
「分かってます。その前に、柚香のことについて沙耶に送らないと……」
柚香は、親無し子といえる子供だった。
常に薄着で、痩せ細っている子供。
初めて見たとき、ユイラを思い起こさせた。


