「沙耶、獲物を使うのなら、あれはちゃんとしとかんとな?」
"あれ"と言うのは、父さんから昔、教えられたものである。
「分かってるわ。……まさか、使う時が来るとは思ってなかったけどね」
教えてもらった時は、使う時があってたまるものかと思っていたが、なるほど、実際にその時になってみれば、使うものである。
「じゃあ、無理しないように頑張るわ。弾、全部なくなったら、許してね」
「……それ、一日中、乱闘しても、余るくらいあるんやけど」
「身の危険を感じたら、適当に使うから~柚香がいるとこ、携帯に送ってて。そして、そこに弾、持ってきてくれない?」
「……僕と同じ性格をしとる君に、何言っても無駄やな。後で、零に届けさせる」
「ありがとー」
「帰ってきたら、ちゃんと、顔を見せに来いよ?」
「そうよ、ちゃんと顔を見せに来てね」
「はーい」
心配されているのはわかってる。
でも、こんなところでしおらしくして、この怒りを抑えたくない。
だからこそ、旅立ちは笑顔で。
「いってきます」


