「大切な娘に傷ついて欲しくないんよ。やから……なんかあったら、僕に言い。何を敵に回しても、君とユイラは守るって決めとるから」
「……御園も?」
「勿論。姫宮も、神宮寺も、明香も、仙菓もや」
明香と仙菓は御園とも関わりのある名家である。
明香は洗剤や香水などを、仙菓は有名な御園の次に名を連ねる菓子の老舗である。
「……どれも、敵に回しちゃ駄目じゃない」
「でも、大切なものを傷つけられるんやったら、話は別や」
母さんと結婚する前……出逢った時から、母さんを裏で守り抜いてきた父さん。
一見、善良な人間なのに、大切なものが絡むと、その皮は剥げ、本性が出てくる。
母さんを守るために、父さんは何度、牙を剥き、母さんを包み込んで、母さんを害するに咆哮を上げただろうか。
人は見た目で判断してはいけない。
彼はそれのいい例だった。
「……父さんのそういうところ、好きよ」
「ほんま?おおきに」
ニッコリと微笑んだこの仮面の下で、彼は何を思い、考えているのだろう。
娘の私でも、想像は全くつかない。


