「……それは、同じ権力者だから?それとも、男だから?」
「どっちも違う。……愛妻家やからや」
私は、相馬にイラついているんじゃない。
ただ、悲しいのだ。
彼の不安を、全てを、理解してあげられない自分の無力さが、ただ、悲しくて、悔しい。
「……沙耶の気持ちはわかるわよ。夫婦になっても、相手の気持ちはわからないしね。でも、信じてあげなくちゃ」
「……」
「妻が信じないで、誰が本当の夫のことを信じてあげるって言うの?何があっても、相馬さんを信じなさい。貴女が愛されていることは、誰から見ても、一目瞭然よ」
母さんはニッコリと微笑んで、父さんのそばから離れる。
「獲物をもって、柚香を救いに行くのは構わないわ。けど、貴女は仮にも権力者の娘で、左が不自由なのだから。獲物じゃなくて、刀の方がいいんじゃない?ねぇ、健斗」
「ユイラの言う通りや。権力者の娘とかはどーでもええが、自分の身のことは大事にせえな」
母さんが傍から離れたせいか、席を立った父さんは母さんと共に私の前に立ち、私の頭を撫でた。


