「私の家、偉い人がいっぱい!」
「沙來はね、あの物語が好きなんだ~」
この闇が絶えない家の中で、夢を見る。
「―憂霞!ここにいるのか?」
憂霞と呼ばれた双子の母親は、ゆっくりと顔をあげて。
「あ、お母さん!お父さんだ!」
「おかえり~!お父さん!!」
「うわっ、紫霞、沙來、吃驚した……」
双子と、愛しい人の姿を見た。
「ねぇねぇ、お父さん、沙耶さまって知ってる?」
「沙耶さま?沙耶さまって……お祖父様のお祖母様だろ?」
「そうそう。話したら、気に入っちゃったみたいで」
「だいぶ、変わり者だったって話だぞ?じいさんによれば」
「彬さんはあったことがあるの?」
彬さんは、沙耶さんのお孫さんで。
「あるある。何せ、孫だし。孫どころか、玄子まで見て、亡くなられた方だぞ?その玄子が、俺なんだが」
「あら、そうだったの」
「俺の名前も、沙耶さまがつけてくださったそうだ。俺が一歳の時に亡くなったから、俺は覚えてないけどな」
「貴方の素敵な名前、沙耶さまがつけたのね」
「ああ。そうだぞ?だから、紫霞たちも曽祖父母につけてもらったんだ」
「なるほど」
二人の娘である紫霞と沙來の名付け親は、双子の高祖父母にあたる、沙耶さまの息子夫婦だ。
第322代目、総帥でもある。


