―貴女は、幸せでしたか?
訊ねることが出来なかった言葉だけど、今なら、判る。
夕蘭は、幸せだった。
「……もう、二度と離せねぇからな」
「ん」
「どこに逃げたって、すぐに捕まえる」
「逃げないよ」
「どうだか」
相馬は、笑う。
「もしかして、前世のことを言ってる?あれは、仕方がなくてね……」
「いや、やっと……」
「……ん?」
「御園相馬として、やっと、見つけたんだ」
「…………ん」
彼らは、言った。
前世で自分達が突き放したから、酷いことをしたから、巫女の数人は“呪い”をもって生まれたんだって。
でもね、思うんだ。
あなたたち守護聖が、与えた傷が“呪い”なら、
私たちが、あなたたちに与えた傷は何になりますか?
幾千年の時を、私たちに注いでくれたあなたたちを、私たちは恨めない。
だって、そんな気がおかしくなるほどの時を生きて、私たちを永遠に、一途に愛してくれて、私たちのもとにきてくれた。
そして、なお、私たちに愛を誓ってくれる愛した人を、私たちは責められない。
責める、資格もないと思うから。
だから、誰も口にしないんだ。
お互いに、罪を犯しているから。


