「……草志に、感謝しねぇとな」
「え?なんて……わっ!?」
ぼそり、風に乗ったその一言を聞き取れず、振り向くと、大きな腕に包まれた。
「愛してる、沙耶」
「……」
「草志にも、負けねぇくらい……愛してるよ」
「……うん、私も。夕蘭に負けないくらい、あんたを愛してる」
私の前世の夕蘭は、ただ、愛した人に愛されるだけの人生ではなかった。
誰にも愛されない、容姿だけの一人っきりの真っ暗な人生に、光を与えてくれた愛した人は人間じゃなかった。
草志を愛し、愛され、草蘭を授かって。
争いを避けるために、夕蘭は権力者と結婚した。
権力者の子供として、愛する人の子供を産んだその後は、草蘭を守るためだけに奔走して。
結果、呪いをかけられて、殺された。


