「だから、儀式、お願いね?」
まだ、終わっていないもの。
彼の本当の妻になるためには。
「沙耶……」
「心配要らないわ。だって私は、父さんの娘だし。あんたに愛されていると、自負しているもの」
心配そうな彼の声に、私は微笑む。
「生きたいから、儀式をしたい」
「……」
「貴方の横で、一生、貴方に愛される妻として」
「……」
「ね?相馬?」
「……わかったよ」
彼はため息をつくと、私の頭を撫でた。
「今更、お前のことは手放せねぇしな。悠哉たちもいるし……一生、一緒に生きるには、それしかねぇんだよな」
儀式に耐えられず、亡くなった人間は多くいる。
それを知っているからこそ、彼は踏み出せない。
「私を信じて。相馬」
だから、私は答えるよ。
貴方が信じてくれたなら。
「私はあなたを愛してて、あなたは私を愛してくれていると自負しているからこそ、私は儀式を受ける決心がついたのよ?あなたも私を信じてくれないと、フェアじゃないわ」
胸を張って、貴方の横に立つために。
「自分の身くらい、自分で守る。ようやく見つけた、安心できる場所だもの。誰にも、譲ってなんかやらないわ」
私は、力が欲しいんだ。


