「さて、何の子守唄が良い?」
「知るか」
どうやら、甲斐が演奏するらしい。
「知るかって……投げ出さないでよ。普段でも、相馬のせいで疲れているんだから。お前、仕事入れすぎだし。振り回されるこっちの身にも……」
「だぁー!分かった!うるせぇ!」
「うるさいのは、相馬でしょ。どうしよっか、兄さん」
それだけ、使われたんだろうか。
いつもより、甲斐の言葉に棘がある……。
「月の国のは?」
「闇璃?」
ふと、闇璃がそう言った。
闇璃は、小さな声で。
「玉華姫の、歌っていた……」
と、言った。
「玉華姫……月姫の母親……」
「俺らは会ったことねぇよな」
「まぁ、仕方ないけどね。月から、炎の国は離れているし……じゃあ、“月桜”?」
月の国の子守唄は、“月桜”というのか。


