「お前なぁ……」
キスする度、告白する度に、夏渡はため息をつきます。
そして、言うんです。
「毎回言うけど、女がするもんじゃない」
……この台詞を。
「どうして?だって、してくれないじゃない」
「いや、そういう雰囲気じゃなかったろ?それに、婚約は……」
「破棄した方がいいのなら、破棄するよ。夏渡のことは好きだけど、私の気持ちの押し付けで苦しめたくないし。私が御園の娘ってことで、扱いにも困るでしょうし」
自分の立場はわかってます。
わかっていても、気持ちの加速は止められないもので。
私は、夏渡以外とキスをしたことがありません。
「あー、違う、違う。そうじゃなくてな?」
彼は優しいから、幼かった私のわがままを聞いてくれているだけ。
そう、自分に言い聞かせてきた。
「真耶」
それでも、悲しいものは悲しいです。
好きなものは、好きなんだから。
「まーや」
「……」
名前を呼ばれるけど、私は無視しました。
柄にもなく、泣きそうだから。


