「夏渡!」
「真耶」
庭に出ると、夏渡が木を見上げていました。
私は彼の名前を呼び、彼に駆け寄りました。
「何してるの?」
「いや、相変わらず、ここの庭は綺麗だなと思ってな」
「金をかけているだけあるよね」
「現実問題、ぶちこむなよ」
私は、現実主義者です。
現実にないことは、夢に見ません。
「そんなことより、伊織さん、帰ってきたんだな」
「うん。変わってなかった……いや、綺麗になってたよ」
「そうか」
「兄さん、避けるんだよね。伊織さんのこと」
「……何を話したら良いのか、わからないんじゃないのか?」
夏渡は、とても優しいです。
誰のことも非難しないし、私の悪いところも、昔から指摘してくれました。
「わからないって……何で?」
「男には、色々とあるんだよ」
「へー……」
色々って、何でしょう。
気持ちを伝えることに、何かあるんでしょうか。


