☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3





『キャー!』


……誰かの、嬉しそうな声が聞こえます。


応接間の“春舞の間”からです。


私は外に出る前に、覗くことにしました。


「なんの声?」


義姉さんたちも、不思議そうについてきます。


障子を開けると、


「―あ、お久しぶりです。皆さん」


知っている女の人が、微笑んでいました。


悠哉兄さんを、変えた人です。


「伊織!?え、本物!?」


「お久しぶりです。葵さん、御元気ですか?」


「元気、元気!そりゃあ、もう!」


伊織さんとは、母さんが面倒を見ていた人です。


家族をまとめて事故で喪ってしまった彼女は、母さんが可愛がり、美耶姉さんや義姉さんとも仲良くて、悠哉兄さんが……唯一、愛した人でした。


先程の叫び声は、美耶姉さんのようです。


淑やかで大人しい彼女は、自分と目を合わせてくれない悠哉兄さんのことを気にしながらも、笑っています。


「……お久しぶりです、真耶さん」


この人のことも、私は嫌いではありません。


とても、お世話になりましたし。


「久し振り。元気にしてました?伊織さん」


私は笑顔で、答えました。


悪いのは、優柔不断な兄。


私は、そういう見解だからです。


「はい。色々ありましたが……」


ふと、彼女の目に、闇が映りました。


何か、あるようです。


それでも、彼女は悟られまいと笑います。


彼女の指には、リングが光っていて……。