「……何?真耶」
「ううん、何でもないわ。お母さんは?」
「さっき、母さんを訪ねてきた客がいてね。そこの対応に」
「あら、母さんへのお客様だったの?」
「みたいだね」
ニコリとも、しない。
演技でも、笑っていた兄は笑わなくなりました。
でも、理由はわかっています。
「……兄さん、仕事は?」
「やることない。終わっちゃったから」
「…………昔みたいに、なにか作らないの?」
暇なときは、料理やお菓子を作ってた兄さん。
手先が器用な兄さんはなんでもできて、とても、美味しいものを作り上げていた。
でも、もう、作っていなかった。
それこそ、5年前から。


