「あんたが笑っているのを見て、見とれちまったんだよ。あんなの、生まれて初めてで……」


顔を真っ赤にしながら、口を覆う拓斗を愛しく感じる私は、やはり、異常なのかもしれない。


でも、そういう恋も、あるでしょう?


「私はあなたしか、要らない。だから、私の夫になって?私の夫に、あなたがなってくれると言うのなら、私は貴方を全身全霊で愛すから」


「……」


私の言葉に、彼は俯く。


「だから、私を“愛して”。幸せにするから」


彼は、俯いたまま、笑みを溢す。


「ハハッ、ほんと、変わってるなぁ……」


「ごめんね、“普通”じゃなくて」


「いや……」


「“普通の生活”は出来なくなる。それでも、貴方を愛すから。私が貴方を裏切ったら、殺して良いから。だから、私のことを“愛して”欲しい」


御園の生活は、普通を捨てさせる。


それでも、私たち御園の人間は愛しい人を欲す。


「…………御園」


「千鶴で良いわ」


「……千鶴」


「なあに?」


名前を呼ばれるだけで、愛しい。


「あんたに、賭けてみる」


彼は、顔をあげた。


泣いているような顔だった。


けれど、それも一瞬で。


「人生を」


すぐに、強い瞳となる。


「一生、かかるわよ?」


私は微笑んで、彼の頬に手を滑らせた。


彼は、不敵に笑って。


「望むところだ」



終(続く、かもしれない)