「……特待で。蒼繚華に入ったんだ」
「特待で?……頭、良かったのね」
レベルの高い学校だ。
だから、驚き。
「いや、まさか。勉強したんだよ。孤児院で」
「孤児院?入ったの?」
「あの後ね。紹介されて……有り難く。そこで、講義を受けてさ」
「講義を受けて、蒼繚華……もしかして、姫宮の?」
そこは、私が寄付している場所。
そして、これから行こうとしていた場所だった。
「ああ」
「そうだったの……」
探し出さなくても、近くにいたではないか。
毎月行っていたのに、気づかないとは。
「気づかなかったわ」
「俺は気づいていたけどね。わざと、姿は隠したんだ。次は返す時って、約束したから」
彼は、苦笑する。
「三年もかかって、ごめんね」
「良いわよ。使わないから。ねぇ、ところで、貴方の名前は?」
顔を覗き込むように、訊ねれば。
「拓斗」
彼は、そう名乗った。
「拓斗?」
「うん」
「良い名前ね」
「……ありがとう」
どうしようか。
もう、彼には、愛しさしかない。
まだ、二回目なのに。
一目惚れの威力は、恐ろしい。


