……と、思ってたのが、14のとき。
あれから、3年。
私は高校生となり、姫宮の経営する蒼繚華に入学していた。
あのカードはまだ、返ってきていない。
(私としたことが、名前を聞き忘れたのよね)
弟の名前はわかるが、肝心の本人の名前を忘れていた。
調べればすぐなんだろうが……
(それじゃ、つまんないし)
私は今日も、変わらず、学校をサボる。
まともに行ってないけど、行かなくても単位は取れるし。
面倒だから、これでいい。
そんなことを思いながら、今日は孤児院に行こうかと、裏門を開けたとき。
「あ」
壁にもたれ掛かるように立っていたのは、一人の青年で。
その金色の瞳にも、形の良い唇にも、私は見覚えがあった。
「……お久しぶり、です」
彼は照れたように頭を下げ、私を見る。
彼は、蒼繚華の制服を纏っていた。
「いらっしゃい?」
「こ、こんにちは……」
深々と下げた彼は、私にカードを差し出してくる。
「ありがとう、本当に助かった」
「いいえ。弟君は、元気?」
「ああ、お陰様で。元気に学校行ってるよ」
「そう。良かったわ」
カードを受け取り、私は微笑む。
「でも、まぁ、あまり、使用してなかったみたいだけれど」
「仮にも、人様のお金だからね」
「あら、気にしないで良かったのに。逆に、使ってほしかったわ」
「何だって?」
「嫌味かもだけど、うち、お金が余り過ぎているのよね。だから、孤児院にも寄付しているけど……ところで、あなたはどうやって?」
不思議だった。
だって、蒼繚華だ。


