「遅くなって、申し訳ありません」


「構わないわ。それよりも、早く」


和貴は累斗君を抱き上げると、車に運んで。


「ほら、貴方も」


私は、彼の背中を押した。


「またね」


そう微笑めば、彼は一瞬、足を止める。


そして、再び、笑った。


その笑顔に、私の胸は高鳴る。


車が発進した後、


「……ちづ?」


母親が、裏門から顔を覗かせて。


「出掛けるんじゃ、なかったの?」


「うん。そのつもりだったんだけど。……さっき、思わぬ出逢いをしちゃってね」


「えぇ?こんな裏路地で?」


「ええ。とっても、素敵な運命の出逢い」


ニッコリと、母さんに微笑む。


すると、


「フフッ、よっぽど、良いことがあったのね。あんたが嬉しそうなの、何年ぶりかしら」


と、母さんも笑った。


そのときが来るのは、まだ、遠い未来―……