「どうしました、千鶴さま」
「ちょっと、今、人を拾ったんだけど」
「はい!?」
「門の前にいたのよ。……どうやら、虐待されていたっぽくて。でも、金持ちの情けは受けたくないらしいの。けど、弟君が熱出している上に、二人とも、怪我だらけ。だから、伯父さんの所に連れていってくれないかしら?」
「松山病院、ですか?」
「ええ。貴方になら、大丈夫だと思うわ。貴方、母さんの扱いで慣れているでしょう?」
「はあ……」
「裏門に車を回して」
「御意」
話が、簡単に通じる人間は、かなり便利だ。
和貴は信頼できる人間だから、安心である。
門から再び出、私は、少年の肩に自分の着ていたパーカーを掛けた。
「なっ……」
「着ていきなさい。貴方にあげる」
「……」
「それと、これ。お金ね。家に帰りたくないなら、これで生活なさい。これも、持たせておくわ」
渡したのは10万入っている封筒と、私の身分証明書。
「御園、千鶴……14?」
カードに書いてある生年月日を見て、少年は目を丸くした。
「ええ、そうよ。中学二年生」
「……」
「その10万円、返さなくて良いから。好きに使って。それと、そのカードを見せたら、私の口座からお金は落とされるから」
「……何で、ここまでするんだ?道端の人間に……情けか?金持ちの娯楽か?」
驚いた表情で、私を見上げる男。
「仕方無いじゃない。貴方を、助けたいんだもの」
今まで、どの人間にも感じなかった。
私を見上げる瞳に感じる、いとおしさ。


