「累斗は、大丈夫なのか……っ!?」
「熱はあるけど、大丈夫。あなたたち、家は?」
無言で、目をそらす男。
「……そう」
私はそれ以上、聞かなかった。
だって、それは、そういうことだろうから。
「とりあえず、治療ね。家に……」
裏門から入ろうとすると、
「お前、この家の人間か……?」
震える声で、少年が聞いてきた。
私は、それに頷く。
「ええ、それが何か?」
私の返答が、お気に召さなかったのか。
目を見開いた少年は、叫んだ。
「金持ちの世話にはならない……っ!」
と。
「……」
どんな理由があるのかは知らないが、別に、聞こうとは思わない。
私は……と、いうか、私たち兄弟は、あまり、物事に興味がないみたいで、私も無理矢理、聞き出そうなんて思わなかった……いや、思えなかった。
例え、感じた相手でも、無理強いは嫌だった。
「そう」
多分、この少年からすれば、金持ちが妬ましいのだろう。
苦労など、知らないのだから。
「……でも、そのままじゃ、累斗君は衰弱するだけよ?弟を救いたい、でも、この家に入りたくないと思うのなら、少し、待ってなさい」
自分の一言に言い返されるとでも思ったのか、私の返しが思ったものじゃなかったのだろう。
少年は目を見開いて、私を見ていた。
私は指紋認証をして、門を開けた。
「和貴!」
遠いが、視覚に入った和貴を呼ぶ。
私の声にすぐ反応した和貴は、駆けてくる。


