ゆっくりと顔を上げると、視界に入った紘の姿。
一方的に紘が与えるそれは、男の山を作ってく。
まるで、お母さんがやったように。
「―雇い主、吐かせるか」
一通りメタメタにした紘は私に駆け寄ってくると、私の顔を覗き込んできて。
「お傍を離れて、申し訳ありません。お嬢様」
と、私の前に座り込んだ。
「絋……」
「まぁ、この場合、傍を離れたのではなく、逃げられたが正しいんですがね。弱いんですから、離れんでくださいよ」
「うっ……」
私の顔を一通り覗き込み、安堵したのか、絋は電話をかけ始めた。
「絋、怒ってるかな……」
そう、呟くと。
「うーん……勝手に離れたことは怒ってるかもだけど、大丈夫だよ。美耶ちゃん」
「え?」
「あいつ、美耶ちゃんには甘いからね」
「それに、怒りの矛先は……別のところみたい、だし」
「美耶ちゃんが、あいつのことで気にする必要はないよ。あいつは護りたくて、美耶ちゃんを護ってるんだから」
「ね?」と、微笑む、絋の幼馴染みたち。
彼らの笑顔を見てたら、何だか……今さらになって……


