その声に驚いたのか、勢いよく、男は振り向く。


けど、そこには、誰もいなくて。


「もう一度、言うぞ?手を、離せ」


声が聞こえる方を見ても、姿が見えないから……男は、焦ったように声をあげた。


「どこだっ!?」


「教えるわけねぇだろ?いいから、手、離せ」


男の手が、掴まれる。


涙でぼやけてきた視界を凝らし、見れば。


「お前たちが、先に手を出したんだ。正当防衛だからな。何をされても、お前は文句は言えねぇぞ?」


紘が、いた。


「ひ……ろ……」


声がかすれる。


そんな私に、彼は微笑む。


「ちょっと、待ってな」


ダンッと、いう、大きな衝撃音が聞こえたかと思うと、私は解放されてて。


座り込み、酸素を求めた。


呼吸を整わせようとしても、息苦しくて。


「―大丈夫?」


紘の幼なじみたちが駆け寄ってきても、私は応答できなかった。


紘の代わりに背を撫でてくれた煌月くんは、


「酷いね~」


と、言いながら、紘のほうを見てる。