『何か、欲しいものない?』って。
彼は、私を上から下まで見て……
『…………特にありません』
と、そっぽを向いた。
絋のその行動は意味がわからなかったが、
『……貴女の身長が伸びることを祈りますか?』
すぐにそう言われ、
『余計なお世話っ!』
と、私がキレてしまったので、中学の担任に話を聞き、絋の希望進路を調べたのである。
すると、光陽学校と、答えられた。
だから、私は近くの女子高に進学を決めたのだ。
傍を離れることは、絋の立場上、許されないから。
私の言葉に目を見開いた絋は、もう、何も言わなかった。
そして、進学して、半年。
私は男子がいなければ、普通の生活を送れることを知った。
女子高は、それなりに快適だった。
やっぱり、人に囲まれることは避けられなかったけど、絋が級友と楽しそうだったから、私は嬉しかった。
―分かってた。
この感情を、恋って呼ぶこと。
でも、今更、素直になれるはずなんてなかった。


