『……ねぇ』
『はい』
『貴方は、私に仕えるの?それとも、御園に?』
彼は目を見開いたのち、言った。
私は、何故か、彼を手放したくなかった。
『―貴女にお仕えするため、ここにいます。相馬さまに命じられ、あなた様の側仕えになりに来ました』
『あら、じゃあ、先程の挨拶は?』
『……一応、宜しくお願いしますという……』
『見えなかったわね。敬語じゃなかったし』
『そうですか……』
それでも一人できただけ、立派なことだった。
私ら、それをすごいと素直に思ってた。
私達みたいに、血や特別教育のもとで形成されたのならば、絋がやっていることは出来て当たり前だった。
そもそも、御園の9歳なんて、現実の社会について詳しく知っておかなければならない。
一人一人の名前とか、動く方針とか、色々とあったのだ。
細かく……それが、私、鬱陶しかったんだ。
なのに、絋はそんなものに頼らなかった。
家の権力とか、細かいことは気にしなかった。
大人でが間違えることでも、彼は輝かしい成績を残していた。
だからこそ、私の側仕えに選ばれたんだろうと思った。


