沙耶が握りしめていた紙を無言で奪い取り、沙耶が慌てるのを横目に、ざっと目を通せば。


「『別れろ。さもなくば、双子の命は……』……なによ、これ……」


「あ、あは、あはは……だ、大丈夫、多分、悪戯だから……」


「バカ!相馬には言ったの?言わずに、家出してきたの!?」


無理して笑おうとする沙耶は、静かに首を横に振って。


「最低だよね……自分の子供のことなのに……私、柚香に丸投げしちゃった……相馬とケンカして、本家に帰りづらいからって……」


ポタリ、と、涙を溢す。


「……それ、さっき、沙耶宛に送られてきたんだよ。大量の髪の毛と一緒に」


「っ……送り主は?」


「不明。沙耶に聞けば、ずっと前から、こんなことはあったらしい。……そうなんでしょ?」


冷静に説明してくる千尋は、焦りを見せず。
沙耶は静かにうなずき、自分の鞄を指差した。


沙耶の鞄から、10通以上の手紙を取り出した。


「安心して。中に仕込まれていたものは全て、処分してあるらしいから」


「仕込まれていたもの?」


差し出された手紙を受け取り、開封する。