「…………じゃん」
「え?」
小さい声で、呟かれた言葉。
聞き返すと……
「だって、夏翠たちといい、相馬の回りにいる人はみんな綺麗な人じゃんか……家柄が良い人もいるし、性格が良い子だって、きっといる。相馬を好きな子もいれば、私のせいで泣いている人もいるわけでしょう?」
と、言う。
「桜、千尋、梨華、朱里、夏翠は幼馴染みなんだよねぇ?……ダメだよ、私、勝てる気がしない……せめて、愛されているって実感が抱けるのなら、勝てるかもしれないけれど……」
沙耶が握りしめた、何か。
それは、クシャリと音を立てた。
みんなを見渡して、目で確認してみても、誰もそれを見ていないと言う。
「誰かを傷つけているかもしれない、愛されている実感も抱けない結婚を続けたって、誰も幸せになんてなれないでしょう……?」
茅耶と悠哉が産まれてから、相馬には笑顔が増えた。
会うたびに幸せそうで、『うわぁ……新婚感、漂ってるなぁ……』と、思ったのを覚えている。
なのに。


