「兄貴……帰ってたのか」
「ちょっと、荷物を取りにね」
手荷物を持ち上げ、笑う、長身の男性。
圭吾に似ていると言えば、似ているだろうが……どちらかと言えば、似ていない。
もしかしたら、髪を染めているからかも。
「初めまして。三浦悠誠(ゆうせい)です。圭吾より、五歳年上で、現在、二十歳です。蒼繚華学園付属大学医学部二年で、寮暮らしだから、会うこともあまりないと思うけど……宜しくね」
一言で言うならば、人が良さそうな爽やかな人。
「でも、夏休み中、圭吾が京都にいてくれるなら、いつでも会えるな」
「……何で、そんなに嬉しそうなんだよ?」
「可愛い弟に会えるから」
「……可愛い言うな」
「ハハッ、そりゃ、無理なお願いだ」
圭吾を物凄く可愛がっていることだけ、伝わってくるこの人は。
「いつだって、お前は俺の可愛い弟。お前を守ると、母さんとも約束したしな」
「……」
悠誠さんの微笑みに、無言になる圭吾。
圭吾もまた、兄を嫌っているわけではないらしい。
「と、いうわけで。父さん、圭吾の好きなようにやらせてやんな?俺の夢は、医者だし。場合によっちゃ、道場を圭吾に継がせるつもりだろ?」
「ゲッ、そのつもりなのかよ。くそ親父」
「くそ言うな。……ったく、顔は、母さんに似たくせに、どうして、そんなに口が悪いんだ」
……性格が似ているからかもしれない。
「明菜は、美人で、優しくて、料理上手で……」
「はいはいはいはい。もう、母さん自慢は良いから。母さんがすごい人なのは、知ってるから。じゃ」
父親の言葉を華麗にスルーし、圭吾は二階へ上がる。


