「お、おい、藤島、柏原っ……お、お前ら……」
この小林先生は、俺らの正体を知っている。
だから、蒼繚華も余裕だと言ってくる、が。
「大丈夫ですよ。先生」
「ふ、藤島?」
「絶対に、受からせますから」
絶対的な笑みで、柊真は慌てる先生を黙らせる。
思いっきりの威圧だ。
「そ、そうか……」
この先生は、少々、気が弱い。
でも、俺はこの先生が個人的に、とても好きだった。
何故なら……
「はい。じゃあ、夏休みに早速、勉強合宿ですから。失礼しますね」
「お、おう……」
欲がない先生なんだ。この人は。
「……相変わらず、怖いな。姫宮……藤島は」
「……俺しかいませんから、姫宮と言っても大丈夫ですよ?」
しまったという顔をして、口を手で覆う先生。
「そ、そうか?で、でも、万が一……」
「そんときは、そんときです。ってか、周りが騒ぎすぎなんですよ。別に、暗殺者くらい、自分で始末できるのに。母さんに言ってみて下さいよ。俺以上の身分のくせして、言いますよ」
柊真が三人を連れて、靴箱の方へ向かったお陰で、周囲に人はいなくて。
「……まぁ、想像がつく」
先生はため息と共に、そう、吐き出した。


