「いきなり、こんなことを言って、ごめんなさいね。でも、考える時間はあるから。まだ、12月だし……少なくとも、4月……5月くらいまでは、行けるかな……うん」
「そんなには、待たせません。早めに、結論はだします」
「そんな急がなくていいのよ?貴方にも考えることとか、もし、行くならば、準備とかあるし」
「そうですね」
「あっちで、全部揃えてもいいけど……それは、貴方が嫌がるでしょう?」
財力を誇る御園にとって、それくらい、他愛ない。
お願いすれば、ホテルよりも素晴らしく、広い部屋が、一日で出来上がることだろう。
それこそ、何にも困らないくらいまで。
「当たり前です。そこまでのご厚意に甘えるわけにはいきませんし」
「言うと思った。でも、困ったら、いつでも言ってね?貴方は、私のかわいい息子の一人なんだから」
「そう言ってくださると、嬉しいです」
この人たちは、第二の親だ。
そして、彼らの提案してくれた案は、俺にとっても良いものだ。
でも、それを選べば……
『煌』
柔らかな、茅耶の笑顔が脳裏によみがえる。
(選べば、離れないといけない)
茅耶か、未来か。
どっちを選択すべきかわからなくて、俺の心の中は、いろいろな感情が渦巻く。
『ずっと、一緒だ』
早速、守れなくなりそうな約束。
決めきれず、結論を出せないまま、俺は笑みを浮かべてた。
障子の向こう……外で、誰が聞いているのかすら、気づかないまま。
「煌……」
障子の外で、少女が呟く。
俺の守りたい、愛しい女の子が。
このときの俺は、彼女に気づいていなかった。
─同じ空の下、今日も君を想う、に続く─


