「……確かにな」
「でしょ?何より、それを使えるほど、茅耶の運動神経はよくないし。大体、あそこはセキュリティがかかってて、煌みたいに指紋認証しないとは入れないし、もうひとつの近道とも言える、庭にある池の底の洞窟は、確かに外に繋がってるけど……場所的に言うのなら、秘境に繋がってるんだよ?」
「そうなのか?」
「うん。まず、泳いで洞窟のなかを通ると、ひとつの水面に出るんだ。誰が作ったのかは知らないけど、なんか、大きな隠れ家がある。そこは、何本か、どこかに繋がるであろう道があってね。そのうちのひとつが、秘境のダムと繋がってるんだ」
……恐るべし、御園家。
秘境と呼ばれる、何百年も前から守られている御園の秘境は、大体の面積は山三つぶんだと聞く。
それを所持していることを『大したことじゃないよ』と言えるほどに、御園の家の力は強い。
「つーことは?」
「そこまで、泳がなくちゃいけないってこと。茅耶と美耶には、壊滅的に運動能力はないんだよ?知ってるでしょ?茅耶は泳げないってこと。垂直に溺れるんだから、池の通り穴を仕えるはずがない。それを使えるほど、茅耶には勇気もないよ」
「……確かに」
「だから、心配はしない。もっと言うのなら、家から誰が出たとか、どこにいるとか、そういう情報、全部、録られてるし?」
「……」
「裏の仕事が存在するんだ。あっても、不思議じゃないだろ?」
「……本性、現してきやがったな」
「えー、どっちも、俺だよ」
にこやかに笑う悠哉。
こいつの笑顔ほど、恐ろしいものはない。
ってか、本当に、こいつは心から笑えるのだろうか?
いつも、作り笑いばかり浮かべている気がするのだが。


