悠哉によると、茅耶は舞を頑張っているらしい。
『舞、好き?』
『っ、うん!すっごく、楽しいの!』
舞の話になると、顔を輝かせた茅耶。
『じゃあ、茅耶は舞の妙手になるね』
『……そんなこと、わからないよ?』
『なんで?』
『だって、妙手って言うのは……伯母さんみたいなものを言うんだもの』
茅耶の伯母……御園相馬さまの姉君である、御園京子さまは茅耶の舞の師匠であり、日舞の世界で名高い人で。
勿論、家でも、相馬さまの次の地位にいる人だった。
『それは、伯母さまが努力をしてきたからじゃん。茅耶も頑張れば、きっと出来るよ』
『でも、私、……』
『ん?』
『私なんか……』
『茅耶、私なんか、じゃないよ。茅耶だから、出来るんだよ。伯母さまにしか出来ないことがあるように、茅耶にしか出来ないこともある。違う?』
大きくなって思えば、単なる格好つけだったのかもしれない。
小さな女の子を守りたい、ただ、その思いが僕を動かして。
『茅耶が男の人が怖いなら、僕が守ってあげる。僕がそばにいてあげる。その為には、僕にも慣れなきゃだよね』
『煌、くん……』
『よし、じゃあ、毎日、会いに来るよ。そしたら、僕にも慣れてくれる?』
変な、約束をした。
あの日から、俺らは、ずっと一緒にいる。


