『……別に、嫌いとかじゃないの……』
『うん』
『煌くんは、優しいし……けど、怖いの……』
『怖い?』
『うん……』
聞けば、男の人が怖いと言う。
『家族とかね、毎日、家にいる人は大丈夫なの。毎日、顔を合わせてるし……お父さんが、人は選んでるから。だから、怖くないの……』
『うん』
『昔ね、男の人が追いかけてきたことがあって……』
『……』
そうだった。
忘れていたけれど、茅耶は御園相馬さまの長女だ。
命を狙われることも、誘拐されることもあるのだ。
『だから、たまに会う人でも、怖くて……それで……』
『だったら、強くなろう?茅耶』
『え……?』
『茅耶はまだ小さいし、お嬢様だし、手を伸ばせば、誰かが助けてくれる。でも、茅耶はそんな自分が嫌なんでしょう?だから、必死に努力してるんでしょう?』
自分より、二つ年下の幼馴染みに。
少し先輩だった僕は、微笑んだ。


